策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「お疲れ様です、お忙しいところすみません」
「どうした?」
「すぐ終わりますから答えてください。どうして猫は、おなじ猫科なのにライオンみたいにガォって吠えないんですか?」
ごめんなさい、こんな質問しちゃって。お願い、早く答えて。
ハグなんか嫌よ。
「ハグ? 説明しろ、奴か?」
「オペで忙しくて、オンにしてなかったんですか?」
「俺の質問のほうが早い。こちらの質問に答えろ」
馬鹿ばかしい質問の説明をするのも馬鹿ばかしいけれど、卯波先生に説明した。
「わかった。よく聞け、答えだ」
卯波先生の声、一言一句も聞き逃さない。
「首周りにある舌骨が固く、骨化しているから」
「ありがとうございます。ハグを阻止しました」
「仕事をしろ、今は仕事中だ。診察がある、またかける」
淡々としながら電話を切っていたけれど、本当は凄く嬉しかったんでしょ?
卯波先生の声で、こんなに元気になれるなんて。
卯波先生の声には、どれだけの力があるの!
患畜の世話をしていたら戸和先生がやって来た。
「お疲れ様です、もうおひとりでできますでしょ」
「大丈夫、この子たちの病状も把握したよ」
処置法は院長から指示を出されたって取りかかっている。
患畜にごはんを与えながら話しかけた。
「家猫のガォの答えわかりました。舌骨が固くて骨化しているからです」
「へえ、舌骨どこにある?」
知らないで聞いてきたわけ?
「首周りですよ、知らなかったんですか?」
肩をすくめて、両手を上げている。
「ところで、戸和先生って初対面の猫に対しても、手を出しますよね。危険とは思わないですか?」
「愛玩動物なら噛まれて引っ掻かれるだけでしょ」
淡々としている。まあ、そうだけど、‘だけ’って。
「大したことない、愛玩動物相手は人間かんたんに死なないね」
一般人には非日常的な生死を、私たちは日常的に見ているけれど、たしかに獣医療従事者側が死ぬことは、ほぼないな。
「産業動物、牛や馬ね。ちょっと痒いなって自分の体を肢で蹴る、人間当たったら死ぬ。牛、少しうしろ下がる、牛と壁に挟まれたら人間死ぬよ」
不可抗力の一瞬の出来事で命が奪われる。
戸和先生は淡々と話すけれど、今まで命がけで仕事をしてきたんだ。
「大きな牛や馬が怖くないんですか?」
「彼らを助けたいよ、僕の命を捧げても守りたい。それだけ」
ブルーのスクラブから見えている、たくましく太い腕に似合わないような繊細な処置を丁寧に施している。
「だから猫平気。圧死、骨折ないね」
ラゴムに来た当初、卯波先生から言われた言葉が衝撃的だったし、院長は好きにしてって言ってくれたけれど、卯波先生に近い考え方。
戸和先生は、恐怖心の壁もなく平気で手を出すし。
接し方は獣医によって、本当にさまざま。
「もし死んじゃったら?」
「僕が?」
返事のしるしに深く頷いた。
「どうした?」
「すぐ終わりますから答えてください。どうして猫は、おなじ猫科なのにライオンみたいにガォって吠えないんですか?」
ごめんなさい、こんな質問しちゃって。お願い、早く答えて。
ハグなんか嫌よ。
「ハグ? 説明しろ、奴か?」
「オペで忙しくて、オンにしてなかったんですか?」
「俺の質問のほうが早い。こちらの質問に答えろ」
馬鹿ばかしい質問の説明をするのも馬鹿ばかしいけれど、卯波先生に説明した。
「わかった。よく聞け、答えだ」
卯波先生の声、一言一句も聞き逃さない。
「首周りにある舌骨が固く、骨化しているから」
「ありがとうございます。ハグを阻止しました」
「仕事をしろ、今は仕事中だ。診察がある、またかける」
淡々としながら電話を切っていたけれど、本当は凄く嬉しかったんでしょ?
卯波先生の声で、こんなに元気になれるなんて。
卯波先生の声には、どれだけの力があるの!
患畜の世話をしていたら戸和先生がやって来た。
「お疲れ様です、もうおひとりでできますでしょ」
「大丈夫、この子たちの病状も把握したよ」
処置法は院長から指示を出されたって取りかかっている。
患畜にごはんを与えながら話しかけた。
「家猫のガォの答えわかりました。舌骨が固くて骨化しているからです」
「へえ、舌骨どこにある?」
知らないで聞いてきたわけ?
「首周りですよ、知らなかったんですか?」
肩をすくめて、両手を上げている。
「ところで、戸和先生って初対面の猫に対しても、手を出しますよね。危険とは思わないですか?」
「愛玩動物なら噛まれて引っ掻かれるだけでしょ」
淡々としている。まあ、そうだけど、‘だけ’って。
「大したことない、愛玩動物相手は人間かんたんに死なないね」
一般人には非日常的な生死を、私たちは日常的に見ているけれど、たしかに獣医療従事者側が死ぬことは、ほぼないな。
「産業動物、牛や馬ね。ちょっと痒いなって自分の体を肢で蹴る、人間当たったら死ぬ。牛、少しうしろ下がる、牛と壁に挟まれたら人間死ぬよ」
不可抗力の一瞬の出来事で命が奪われる。
戸和先生は淡々と話すけれど、今まで命がけで仕事をしてきたんだ。
「大きな牛や馬が怖くないんですか?」
「彼らを助けたいよ、僕の命を捧げても守りたい。それだけ」
ブルーのスクラブから見えている、たくましく太い腕に似合わないような繊細な処置を丁寧に施している。
「だから猫平気。圧死、骨折ないね」
ラゴムに来た当初、卯波先生から言われた言葉が衝撃的だったし、院長は好きにしてって言ってくれたけれど、卯波先生に近い考え方。
戸和先生は、恐怖心の壁もなく平気で手を出すし。
接し方は獣医によって、本当にさまざま。
「もし死んじゃったら?」
「僕が?」
返事のしるしに深く頷いた。