策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「それは等価交換と言いたいのか?」
「ええ、そうですよ」
「『卯波先生は、私から嬉しそうな笑顔を受け取ってる』って凄いな。俺は控えめだから、その上から目線には敵わない」
「本当のことですよね?」
「そういうことにしておこう」
「自分で、おっしゃったのに。私は忘れませんからね」
「どうぞ、ご勝手に」
淡々と処置をこなす卯波先生の口調も、相変わらず淡々。
「卯波先生はスイカズラに似てますね」
「スイカズラか、花が好きか?」
「好きです」
「初夏だから時期は、もうすぐだ」
「卯波先生も、花が好きなんですか?」
「快適だ」
花が好きかと聞かれて、快適って答える?
「白い花を咲かせて、ジャスミンみたいな甘くていい香りですよね」
「俺は甘くないから似ていない」
かぶすように即答してくる。
「花言葉が、献身的な愛だから似てます」
「花言葉までは知らなかった。動物に注ぐ無償の愛は好きだから、あながち間違ってはいない」
「香りがいいスイカズラの花の効果、知りたいですか?」
「教えたいんじゃなく、言いたいって顔だ、言ってみろ」
聞いて聞いてって、わかりやすかったかな。
「わかる」
出た。私の思っていることが、卯波先生にはわかるってやつ。
「どうしてですか?」
「表情」
そっか。顔や言葉やしぐさとか、表面にわかりやすく出るから、いつもわかるのか。
んんん、違うんだよなあ。考えていることまで、わかるって不思議なんだよ。
「考えごとは、あとまわし、聞いてほしいんだろう?」
「あああ、そうでした」
って、またおかしいよ、どうしてわかった?
「ほら、早くしろ」
「はい。つる性植物だから、他の木にまとわりつきますよね。好きな人と離れないんです。効果は幸せな恋を引き寄せます」
沈黙。興味なしか。
「まだ恋も知らない、無邪気で幼い緒花くんが言っても説得力がない」
「恋、知ってますったら」
「わかった、わかった、知っているよな。緒花くんがおとなになったら、またこの話はしよう」
「もう私、おとなです」
「ひとつ教えるから、よく覚えておけ」
「はい」
「おとなは自分のことを、おとなとは言わない」
「もう、卯波先生ったら。私、子どもじゃないです」
「わかった、わかった、これで保定は終了だ」
今日は凄く喋ってくれた、こんなにフランクに話したのも初めて。
それが、なんだかとっても嬉しくて、いつもの元気に輪をかけて、返事の声が響いた。
声のトーンは、いつも院長が卯波先生から言われている、騒々しいガード下のレベルだったかも。
「初日」
「初日がなんですか?」
「ぶつかった男性と会話をしていただろう」
「はい」
それがなにと、きょとんとしてしまう。
「見ず知らずの人に、あれやこれやと自身の情報を与えるな」
「ただの会話でした」
「無駄な会話だ、もっと危機感をもて。無防備で危なっかしい、まったく」
「明日から、気をつけます」
「今このときからだ」
間髪入れずに言葉を返された。
ん? 会話の内容なんか、卯波先生に聞こえていないよね。
って言うか、私たちの姿も見えていなかったでしょ。
どうして、わかるの?
「ええ、そうですよ」
「『卯波先生は、私から嬉しそうな笑顔を受け取ってる』って凄いな。俺は控えめだから、その上から目線には敵わない」
「本当のことですよね?」
「そういうことにしておこう」
「自分で、おっしゃったのに。私は忘れませんからね」
「どうぞ、ご勝手に」
淡々と処置をこなす卯波先生の口調も、相変わらず淡々。
「卯波先生はスイカズラに似てますね」
「スイカズラか、花が好きか?」
「好きです」
「初夏だから時期は、もうすぐだ」
「卯波先生も、花が好きなんですか?」
「快適だ」
花が好きかと聞かれて、快適って答える?
「白い花を咲かせて、ジャスミンみたいな甘くていい香りですよね」
「俺は甘くないから似ていない」
かぶすように即答してくる。
「花言葉が、献身的な愛だから似てます」
「花言葉までは知らなかった。動物に注ぐ無償の愛は好きだから、あながち間違ってはいない」
「香りがいいスイカズラの花の効果、知りたいですか?」
「教えたいんじゃなく、言いたいって顔だ、言ってみろ」
聞いて聞いてって、わかりやすかったかな。
「わかる」
出た。私の思っていることが、卯波先生にはわかるってやつ。
「どうしてですか?」
「表情」
そっか。顔や言葉やしぐさとか、表面にわかりやすく出るから、いつもわかるのか。
んんん、違うんだよなあ。考えていることまで、わかるって不思議なんだよ。
「考えごとは、あとまわし、聞いてほしいんだろう?」
「あああ、そうでした」
って、またおかしいよ、どうしてわかった?
「ほら、早くしろ」
「はい。つる性植物だから、他の木にまとわりつきますよね。好きな人と離れないんです。効果は幸せな恋を引き寄せます」
沈黙。興味なしか。
「まだ恋も知らない、無邪気で幼い緒花くんが言っても説得力がない」
「恋、知ってますったら」
「わかった、わかった、知っているよな。緒花くんがおとなになったら、またこの話はしよう」
「もう私、おとなです」
「ひとつ教えるから、よく覚えておけ」
「はい」
「おとなは自分のことを、おとなとは言わない」
「もう、卯波先生ったら。私、子どもじゃないです」
「わかった、わかった、これで保定は終了だ」
今日は凄く喋ってくれた、こんなにフランクに話したのも初めて。
それが、なんだかとっても嬉しくて、いつもの元気に輪をかけて、返事の声が響いた。
声のトーンは、いつも院長が卯波先生から言われている、騒々しいガード下のレベルだったかも。
「初日」
「初日がなんですか?」
「ぶつかった男性と会話をしていただろう」
「はい」
それがなにと、きょとんとしてしまう。
「見ず知らずの人に、あれやこれやと自身の情報を与えるな」
「ただの会話でした」
「無駄な会話だ、もっと危機感をもて。無防備で危なっかしい、まったく」
「明日から、気をつけます」
「今このときからだ」
間髪入れずに言葉を返された。
ん? 会話の内容なんか、卯波先生に聞こえていないよね。
って言うか、私たちの姿も見えていなかったでしょ。
どうして、わかるの?