策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「サニーは、オペで血液が必要なときに、自分の血液を提供するために病院で飼われてる」

「習いました、供血犬ですよね」

「正解、出だし好調だな。供血犬は学校にもいただろ?」
「はい」

「供血犬と言っても、犬は猫の血液型と違って複雑だから、もしものときのためにオーナーは、愛犬の血液型検査をしておくべき」

 しないな、したなんて人は聞いたことない。

「いざってときにサニーの血液と、互いの血液が拒絶反応おこしたら、輸血してあげられないからな」

 たしかに。うちの子に限って輸血なんてことないなんて思っていても、どの子だって輸血が必要になる確率がある。
 
 供血犬だけあって、おとなしいな。白ラブだからっていうのもあるかな。
 ひゃんひゃん、ひんひん興奮しないんだ。

「サニー、よろしくね」

「サニーは二歳ながら、すでに九頭の仲間の命を救ってるんだ」
 院長がサニーを、ぎゅっと抱き締め褒めちぎる。
「サニー、凄いね、なんて偉い子なの」

「愛犬の献血で助けられる命があるなら、協力したいって愛犬家が増えてくれるといいのにな」

「知ってるオーナーが少ないんですかね」

「だろうな。まだ日本では、献血ドナー登録の認知度が低い。アメリカには犬猫の血液バンクがあるっていうのに」

 院長が話しながら、サニーの胸もとを優しく撫でる。

「アメリカは、ペット先進国ですもんね」

「うん。日本にも血液バンクがあれば救える命が増えるし、供血犬と供血猫の心身の負担も減るのに、法的に認められてない」

「動物も人間とおなじ命があるのに、もどかしいですね」
歯痒い(はがゆい)

 院長は動物に対して、熱意に満ちていると思うから気持ちを想うと切ない。

 サニーの挨拶を終えると、おもむろに院長が立ち上がったから、院長に目が釘付け。

卯波(うなみ)
 院長が声を上げると、入院室の奥から深緑のスクラブ姿の男性が颯爽と出て来た。

「宝城の声は大きくて、よく通るから声のトーンをもう少し落とせ」
「爽やかな声って追加しろよ」

 その人に笑いかける院長は、全身から嬉しいってことを惜しみなく表す。わかりやすい人なのかな。

 その人も院長に負けず劣らず、すらりと引き締まったバランスのいいスタイルだから、二人が並んで立つと、おしゃれな雑誌の表紙だ。

 どうにも気になるマスク姿の長身に向かって、首を伸ばせるまで伸ばして見上げた。
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