策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
震えるのは、それだけ卯波先生のことが大好きなんだって知ったとたん、上げたい叫び声を必死にこらえて、両手で口を覆う。
嬉しさは満面の笑みに表れ、心のボタンが弾け飛ぶ。
心がね、全身がね、嬉しいよ楽しいよって叫ぶの。
そっと唇に触れてみた。
──私のファーストキス──
さっきまでの、夢見心地な卯波先生との時間が、いつまでも目に焼きついて離れようとしない。
ちょっぴり恥ずかしくて、おとなになった気分でくすぐったい。
低く熱っぽい声や広く逞しい腕の中。そっと自分の体を抱き締めてみる。
目を閉じれば五分前の出来事みたいに、卯波先生の姿が思い浮かび、胸のどきどきが激しく私の体を熱くする。
初めて恋をした。
そして、心を奪われた。
なのに、なにかが増えている。
恋って不思議がいっぱいなんだね。
おやすみなさい、卯波先生。
風に揺られるカーテンのすき間から漏れる朝の日射しで目が覚めた。
きっと、いつもと変わらない朝なのに、私にとっては特別な朝が始まった。
昨夜の帰り道は、嬉しかったり寂しくなったり。
恋する心って、アップダウンが激しい坂道を、息咳切って走っているみたい。
これから、恋のランナーズハイが起きるのかな。
逢いたいのに緊張してきた。どうしよう、どんな顔をして逢えばいいの?
「いつものように元気な声で、笑顔で挨拶をすればいい」
「そっか。自然体で、いつもみたいにね。どきどきしちゃう、できるかな」
「大丈夫、できる」
「うん、できるよね。って、誰?」
目を白黒させる勢いで隣を見た。
びっくりした。卯波先生ったら、いつの間に。
背筋をピンと伸ばして、真っ直ぐに前を向いて。
持て余す長い足は、地面を踏み締めるようにゆっくりと歩を進めて、私の隣に並んでいた。
「おはようございます、びっくりさせないでくださいよ」
「おはよう、勝手にびっくりしたのは誰」
「誰ですか?」
「桃。なんて策略家なんだ、感心する」
「だって、卯波先生から、名前を囁かれたいんですもん」
私の妙技に舌を巻くって。賢い卯波先生でさえも、太刀打ちできないことがあるのね。
「昨日は、ごちそうさまです」
「こちらこそ、ごちそうさま」
「なにか私、してあげたかな」
「考えるな」
「院長と坂さんに聞けば、意味を教えてくれる」
「好きにすればいい」
首を伸ばすだけ伸ばして仰ぎ見たら、前を見据える目尻が、少し下がった気がした。
嬉しいの? 私のように昨夜は嬉しかった? 寝ても覚めても私を想っている?
嬉しさは満面の笑みに表れ、心のボタンが弾け飛ぶ。
心がね、全身がね、嬉しいよ楽しいよって叫ぶの。
そっと唇に触れてみた。
──私のファーストキス──
さっきまでの、夢見心地な卯波先生との時間が、いつまでも目に焼きついて離れようとしない。
ちょっぴり恥ずかしくて、おとなになった気分でくすぐったい。
低く熱っぽい声や広く逞しい腕の中。そっと自分の体を抱き締めてみる。
目を閉じれば五分前の出来事みたいに、卯波先生の姿が思い浮かび、胸のどきどきが激しく私の体を熱くする。
初めて恋をした。
そして、心を奪われた。
なのに、なにかが増えている。
恋って不思議がいっぱいなんだね。
おやすみなさい、卯波先生。
風に揺られるカーテンのすき間から漏れる朝の日射しで目が覚めた。
きっと、いつもと変わらない朝なのに、私にとっては特別な朝が始まった。
昨夜の帰り道は、嬉しかったり寂しくなったり。
恋する心って、アップダウンが激しい坂道を、息咳切って走っているみたい。
これから、恋のランナーズハイが起きるのかな。
逢いたいのに緊張してきた。どうしよう、どんな顔をして逢えばいいの?
「いつものように元気な声で、笑顔で挨拶をすればいい」
「そっか。自然体で、いつもみたいにね。どきどきしちゃう、できるかな」
「大丈夫、できる」
「うん、できるよね。って、誰?」
目を白黒させる勢いで隣を見た。
びっくりした。卯波先生ったら、いつの間に。
背筋をピンと伸ばして、真っ直ぐに前を向いて。
持て余す長い足は、地面を踏み締めるようにゆっくりと歩を進めて、私の隣に並んでいた。
「おはようございます、びっくりさせないでくださいよ」
「おはよう、勝手にびっくりしたのは誰」
「誰ですか?」
「桃。なんて策略家なんだ、感心する」
「だって、卯波先生から、名前を囁かれたいんですもん」
私の妙技に舌を巻くって。賢い卯波先生でさえも、太刀打ちできないことがあるのね。
「昨日は、ごちそうさまです」
「こちらこそ、ごちそうさま」
「なにか私、してあげたかな」
「考えるな」
「院長と坂さんに聞けば、意味を教えてくれる」
「好きにすればいい」
首を伸ばすだけ伸ばして仰ぎ見たら、前を見据える目尻が、少し下がった気がした。
嬉しいの? 私のように昨夜は嬉しかった? 寝ても覚めても私を想っている?