策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「自分に特別な感情を持っていることを、以前から知っていました」
「特別な感情って、どんな感情だよ?」
茶化すように、院長が口をはさむ。
「俺のことを好きだという気持ちだ」
院長と坂さんが、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、われに返った坂さんが口を開く。
「凄い自信ですね」
「自信ではないです、事実です」
あまりの返答に、ぽかんと口を開けて呆気にとられる坂さんが、小刻みに首を何度も縦に振り頷く。
「卯波らしいな。隠すことなく、すぐに報告してきた」
「男の責任だ」
「意外な組み合わせですね」
「そうですか? 彼女といると、宝城といるときのように気を遣わずにいられ、心が安定して落ち着いて安らげるんです」
彼女だって。
自然に口から出る、卯波先生の彼女って言葉に敏感に反応してしまい、つい隠しきれずに頬がゆるゆるに緩む。
「自分はそのつもりはなくても、端からは素っ気なく思われる」
「昔から、そうだったよな」
「でも宝城や彼女は、そんな俺のことを気にせず、顔色を伺うこともオロオロもせず、放っておいてくれるから、変な気を遣わなくて楽」
どこを見るでもなく、卯波先生が頬を緩ませて嬉しそう。
「俺は、関心の無関心だよ。放ってるようで、実はいつだって卯波を気にかけて気遣ってる」
院長が、私に視線を向けてきた。
「なんも考えてない、緒花といっしょにすんな、心外だ」
「こっちこそ」
それより、なんですって?
「無関心ですって? どの口が。院長ったら、よく言いますね。いつだって関心ばっかりで、卯波卯波じゃないですか」
「緒花はマイペースなんだよ」
「落ち着け、二人は犬と猿か。俺は桃太郎になった気分だ」
私たちの会話を止める、ゆったり穏やかな卯波先生の口調が心地いい。
「桃太郎って、犬猿の仲の犬と猿を、よく家来にしてコントロールできましたよね。私、感心します」
「なあ、緒花さ、話ズレてるから」
「桃太郎の話をしてたじゃないですか」
「卯波の言った、桃太郎の話なんか広げるなよ」
「坂さんも思いませんか。この通り、自然体でマイペースだから、いっしょにいて気が楽なんです」
卯波先生に話しかけられた坂さんが、同意のしるしみたいに頷いて、興味津々で院長と私を見ている。
その目は、きらきらして楽しそう。
「宝城は本当にいい、マイペースで。楽にしてくれる」
「卯波ってさ、心底、俺に惚れてるよな。俺のこと愛してるもんな」
「こういうマイペースなところ」
楽なんだって。
「それと、そんな感情は持ち合わせてはいない」
「ふざけろ、冗談に決まってるだろ」
吐き捨てる言葉とは裏腹に、院長の笑顔には愛情が込められている。
不意に卯波先生が、数秒間だけ私の手を握った。
「特別な感情って、どんな感情だよ?」
茶化すように、院長が口をはさむ。
「俺のことを好きだという気持ちだ」
院長と坂さんが、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、われに返った坂さんが口を開く。
「凄い自信ですね」
「自信ではないです、事実です」
あまりの返答に、ぽかんと口を開けて呆気にとられる坂さんが、小刻みに首を何度も縦に振り頷く。
「卯波らしいな。隠すことなく、すぐに報告してきた」
「男の責任だ」
「意外な組み合わせですね」
「そうですか? 彼女といると、宝城といるときのように気を遣わずにいられ、心が安定して落ち着いて安らげるんです」
彼女だって。
自然に口から出る、卯波先生の彼女って言葉に敏感に反応してしまい、つい隠しきれずに頬がゆるゆるに緩む。
「自分はそのつもりはなくても、端からは素っ気なく思われる」
「昔から、そうだったよな」
「でも宝城や彼女は、そんな俺のことを気にせず、顔色を伺うこともオロオロもせず、放っておいてくれるから、変な気を遣わなくて楽」
どこを見るでもなく、卯波先生が頬を緩ませて嬉しそう。
「俺は、関心の無関心だよ。放ってるようで、実はいつだって卯波を気にかけて気遣ってる」
院長が、私に視線を向けてきた。
「なんも考えてない、緒花といっしょにすんな、心外だ」
「こっちこそ」
それより、なんですって?
「無関心ですって? どの口が。院長ったら、よく言いますね。いつだって関心ばっかりで、卯波卯波じゃないですか」
「緒花はマイペースなんだよ」
「落ち着け、二人は犬と猿か。俺は桃太郎になった気分だ」
私たちの会話を止める、ゆったり穏やかな卯波先生の口調が心地いい。
「桃太郎って、犬猿の仲の犬と猿を、よく家来にしてコントロールできましたよね。私、感心します」
「なあ、緒花さ、話ズレてるから」
「桃太郎の話をしてたじゃないですか」
「卯波の言った、桃太郎の話なんか広げるなよ」
「坂さんも思いませんか。この通り、自然体でマイペースだから、いっしょにいて気が楽なんです」
卯波先生に話しかけられた坂さんが、同意のしるしみたいに頷いて、興味津々で院長と私を見ている。
その目は、きらきらして楽しそう。
「宝城は本当にいい、マイペースで。楽にしてくれる」
「卯波ってさ、心底、俺に惚れてるよな。俺のこと愛してるもんな」
「こういうマイペースなところ」
楽なんだって。
「それと、そんな感情は持ち合わせてはいない」
「ふざけろ、冗談に決まってるだろ」
吐き捨てる言葉とは裏腹に、院長の笑顔には愛情が込められている。
不意に卯波先生が、数秒間だけ私の手を握った。