策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「たまたま通りがかったって、おっしゃいましたよね。感じて駆けつけてくださったんですね」
青紫の殺菌灯だけの薄暗さも相まって、心細くて、怖くて怖くて仕方なかった。
気持ちを察してくれたんだ。
「アルの件では、桃は初めてのことで異様なほどに怯えていた」
誰よりも先に駆けつけてくれた。
怖がる予測はつくとかなんとか言っていたけれど、本当はわかっていたんだ。
こんなにも敏感に、人の気持ちを感じ取ってしまうと、身も心も平気でいられないんじゃないの?
「人の話に共感しすぎたり、自分の悩みのように考えて背負っちゃうと疲れちゃいます」
「桃がか?」
意外な顔で、目を細めて凝視してくる。
「失礼な、私だってありますよ、感じたり触れたりして疲れますよね。それが心配です」
「ごめん」
微笑んだあと、卯波先生が真顔になった。
「自分の意志で、共感力をオフにできる。そして必要なときにオンにする」
「共感力が必要なときって、どんなときなんですか?」
「つまり、相手の状態を知りたいとき」
私のことを知りたかったの? もしや、卯波先生ったら、早いうちから私に惚れていた?
あれ? 卯波先生、私の心を読んでいるよね。
しばらく黙っていても、卯波先生なにも言ってこない。
早くから私に惚れていたのが図星だから、照れてとぼけているんだ、きっと。
「オンとオフは、自由にできるんですか?」
「できる。この能力との付き合いが長いから」
卯波先生は、なんでもできちゃうスーパーヒーローだからできるんだよ。
「コントロールができない人は、人の気持ちを深読みしすぎて、敏感になり体調を崩して気の毒だ。ただ」
いつもは、はっきりとした物言いなのに、また押し黙ってしまった。
卯波先生が、話したいって思えるまで待とう。
目に沁む青空を見上げれば、鮮やかな緑も視界に入り、風に吹かれる木々は囁くような葉音を立てる。
「青っぽい香り、いい匂い。大都会で、自然の香りを味わえて嬉しいなあ」
青空に向かって、手足を伸ばせるだけ伸ばして、大きく伸びをした。
「あああ、気持ちいい、連れて来てくれてありがとうございます」
ハッとして、伸ばした体を縮めた。
「体を伸ばしたら、卯波先生よりも座高が高くなった。卯波先生ったら、どれだけ足が長いの」
にこにこして隣を見れば、私につられて微妙ながらも口角が上がった。
「ありがとう、気持ちを和らげてくれて」
「いいえ、とんでもないです」
小さく息をついた卯波先生が、また自分の考えを頭の中で整理しているみたい。
青紫の殺菌灯だけの薄暗さも相まって、心細くて、怖くて怖くて仕方なかった。
気持ちを察してくれたんだ。
「アルの件では、桃は初めてのことで異様なほどに怯えていた」
誰よりも先に駆けつけてくれた。
怖がる予測はつくとかなんとか言っていたけれど、本当はわかっていたんだ。
こんなにも敏感に、人の気持ちを感じ取ってしまうと、身も心も平気でいられないんじゃないの?
「人の話に共感しすぎたり、自分の悩みのように考えて背負っちゃうと疲れちゃいます」
「桃がか?」
意外な顔で、目を細めて凝視してくる。
「失礼な、私だってありますよ、感じたり触れたりして疲れますよね。それが心配です」
「ごめん」
微笑んだあと、卯波先生が真顔になった。
「自分の意志で、共感力をオフにできる。そして必要なときにオンにする」
「共感力が必要なときって、どんなときなんですか?」
「つまり、相手の状態を知りたいとき」
私のことを知りたかったの? もしや、卯波先生ったら、早いうちから私に惚れていた?
あれ? 卯波先生、私の心を読んでいるよね。
しばらく黙っていても、卯波先生なにも言ってこない。
早くから私に惚れていたのが図星だから、照れてとぼけているんだ、きっと。
「オンとオフは、自由にできるんですか?」
「できる。この能力との付き合いが長いから」
卯波先生は、なんでもできちゃうスーパーヒーローだからできるんだよ。
「コントロールができない人は、人の気持ちを深読みしすぎて、敏感になり体調を崩して気の毒だ。ただ」
いつもは、はっきりとした物言いなのに、また押し黙ってしまった。
卯波先生が、話したいって思えるまで待とう。
目に沁む青空を見上げれば、鮮やかな緑も視界に入り、風に吹かれる木々は囁くような葉音を立てる。
「青っぽい香り、いい匂い。大都会で、自然の香りを味わえて嬉しいなあ」
青空に向かって、手足を伸ばせるだけ伸ばして、大きく伸びをした。
「あああ、気持ちいい、連れて来てくれてありがとうございます」
ハッとして、伸ばした体を縮めた。
「体を伸ばしたら、卯波先生よりも座高が高くなった。卯波先生ったら、どれだけ足が長いの」
にこにこして隣を見れば、私につられて微妙ながらも口角が上がった。
「ありがとう、気持ちを和らげてくれて」
「いいえ、とんでもないです」
小さく息をついた卯波先生が、また自分の考えを頭の中で整理しているみたい。