貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 ゲルハルトのように頭上に耳はないが、尾はあった。しかし毛に覆われたものではなく、表面がつるりとしている。光沢のある真珠色は規則正しく並んだ鱗に艶やかさを与えていた。

「そのままの意味でしょう」

「人間をこの国に置くつもりはない」

 咄嗟に言ってからすぐ、ゲルハルトは口を閉ざした。

 王としてではなく個人としての言葉が思わずこぼれ出たのだと、やり取りを見ていたナディアは感じ取る。

「そういうわけにもいきませんよ。ひとまず客人として部屋を用意いたしましょう。手配は私のほうで行いますので」

 国王のゲルハルトに対し、エセルと呼ばれた男は一歩も引かなかった。

< 115 / 498 >

この作品をシェア

pagetop