貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 しかしふたりは豪快に笑っただけだった。

「いいんだよ、気なんか使わなくたって。ただでさえひとりぼっちで心細いだろう? あたしらじゃ頼りないかもしれないけど、家族だと思って遠慮しなくていいんだからね」

「ベスの言う通りだ。こんな小さいのにえらいよ、あんたは」

 優しく言ったベスの横でアウグストがうんうんとうなずいている。

 ふたりは本心からナディアの力になろうとしていた。それぞれの顔を見ればよくわかる。

(獣人を蛮族だなんて、どうして思えたのかしら? こんなにも親切なのに……)

 前世でも今世でもひどい思いをしたナディアは、泣きそうになるのを必死に堪えた。

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