貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます！～二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?～

　思いがけず触れた優しさが心に染みて、目の前が滲む。

「よしよし、慣れない種族ばっかりで怖かったね。泣きたい時は泣いていいんだよ。あたしの胸でよかったら貸してやるから」

　ナディアのそばまでやってきたベスが、彼女をぎゅっと抱き締めて頭をなでる。

　熊の獣人というだけあってその力は強かったが、それがベスの想いの深さを示しているようでナディアの涙を誘った。

「俺にできるのは料理だけだ。だから明日からはあんたの好きなもんを作ろうな。なにが好きなんだ？」

「オムレツかしら？　中がとろとろのやつが好きよ」

　ベスに抱き締められながら答えると、アウグストはどんと自分の胸を叩いた。