貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
「愚かだな、って言おうとした?」

「……そうだな」

 正直に言うと、ゲルハルトはナディアを見つめた。

「だが、おまえは真剣なのだろう。否定するのはやめておく」

「ありがとう、優しいのね」

「事情は知らないが、個人的には過去に囚われる必要はないと思っている」

 ナディアがゆっくりとまばたきをする。

 過去に囚われている──。

 今まで自身をそんなふうに捉えたことはあるだろうか、という純粋な疑問が生まれた。

「未来の話をしているのだから、過去と結びつけるのは妙だとも思うが。おまえの話を聞いていると、既に起きた出来事のように思える」

< 201 / 498 >

この作品をシェア

pagetop