貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
「勝手に来たくせにあっという間にこちらに馴染んで、今度は俺まで懐柔しようとしている。……おまえでなければ、こんなふうに思わなかった」

 一度はほどいた手を再びゲルハルトが握る。

 そこにナディアがいると、たしかめるような触れ方だった。

「俺を哀れむな。これまで通りに接してくれ」

「……うん」

 起きた出来事を悲しみ、大切な人を守れなかったと悔やんではいてもゲルハルトは前を向いて生きている。

 人間という種族に複雑な思いを抱く過去に囚われすぎず、国やそこに生きる仲間の未来のために妥かなする姿を、ナディアは素直に好もしいと思った。

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