貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
(私も過去にばっかり囚われちゃだめよね。今は違う未来を生きてるんだから)

 過去に囚われるなとは、以前ゲルハルト本人に言われた言葉だ。

 晴れやかな気持ちになったナディアは、黙ったままのゲルハルトを見て言った。

「ありがとう」

「なにに向けての礼なんだ。傷について話したからか?」

「それもあるけど、あなたのおかげでちょっと目の前が明るくなった気がするのよ。だから、ありがとう」

「やっぱりおまえは変な女だな」

「さっきは嫌な女だったのに、今度は変な女なの?」

 いつの間にか部屋に漂う空気がやわらいでいる。

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