貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 エセルはナディアに特効薬の調合を頼むつもりだった。

 断る選択肢など最初からなかったナディアは、ただでさえ色素の薄い顔をさらに青白くしているエセルから袋を遠ざける。

「一度で覚えてみせるわ。でも、厳しくなったらすぐに休憩しましょう」

「ありがとうございます」

 余計な時間は使わず、すぐにふたりは薬の調合を始めた。

 ナディアがエセルの部下が懸命に集めた木の実や葉、根といったものを潰し、刻み、煮詰めている間、ときどきエセルは部屋の外へ出て行った。部下たちへの指示もあったが、それ以上に部屋を満たす香りに耐えられなかったからだ。

(私にとっては清々しくていい匂いなんだけど)

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