貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 ナディアが一般的な薬の調合を知るはずもなかったが、これは獣人たちの間に古くから伝わる作り方である。人間よりも自然に近い彼らでなければ、素材からこういった形で成分を抽出できない。

 時間も忘れて薬を作り上げたナディアが窓を見ると、なぜか陽が昇っている。

「寝ずに夜を明かしたのは初めてだわ……」

 頭がぼんやりするのも、やけに空腹なのも徹夜で薬を作ったせい。

 眠れずに悶々とする夜ならば前世でもあったが、ずっとなにかに集中して朝を迎えた経験はない。

 妙な達成感と、本当にこれで大丈夫かという不安を抱えながら薬を見る。

 様々な素材を使い、時間もかけたのに完成品はほんのわずかだ。

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