貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 そう思いたいのに、あの夢を見てからの数日間がナディアを追い詰める。

 懐かしく感じた自室に、泣くほどおいしかった料理。今日の猫騒動に限らず、既視感を覚える瞬間は何度もあった。なによりナディアは自分自身の身体の変化を強く感じ取っている。

 この身体は灰の塔で罪人として死んだ二十一歳の哀れなナディア・ジエ・フアールのものではなく、まだ子爵令嬢だった頃のナディア・ジエ・リシャールのものなのだと。

「紅茶を用意してくれる? できれば砂糖とミルクをたっぷり入れて。甘いものが欲しい気分なの」

「かしこまりました。すぐにご用意いたしますね」

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