貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
「……正気に戻ってくれたならもういいわよ」

 ナディアはそう言うが、ゲルハルトはなにも返せない。

 衝動に襲われて無体な真似をしたのは事実だが、その間に自分が正気ではなかったかと言えば違う。

 ゲルハルトは自分の意識を保ったまま彼女を欲していた。

 今もまだ、許されるのなら彼女に触れたいと思っている。

「あ、待って。やっぱりもうちょっとだけ許さなくてもいい?」

 欲が出たナディアはこの機会を逃すまいと、ゲルハルトの背後で揺れる尾を示す。

「どうせなら尻尾も触らせてくれないかしら。そうしたら許す……っていうのはだめ?」

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