貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 ナディアと接してきた獣人たちが、倒れた彼女になにかせねばと必死になったように。

「おまえはどうして、倒れるまで無理をしたんだ? なんの得もないだろうに」

 ゲルハルトが尾でナディアをあやしながら言う。

 逃げる尾を追いかけていたナディアは顔を上げると、少し考えてから口を開いた。

「ここにいるみんなが好きだからよ。誰も私を傷つけないでしょ? 悲しいこともつらいことも、ここに来てからは一度もないの」

 揺れていた尾が止まり、ナディアは嬉々としてやわらかな毛並みの感触を楽しんだ。

「故郷にいる間はそれほどつらかったのか?」

「説明が難しいんだけど……」

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