貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 ナディアは星空からゲルハルトへ視線を戻すと、答えに迷っている彼へ笑いかけた。

「きっとあなたは私の気が狂ったんだって考えるでしょうね。王妃になった、罪をかぶって死んだ、なんて私もどうかしてると思うわ。でも本当なの。あの時の怖さは忘れられない」

 以前のように愚かだと言われるならそれでもかまわなかった。

「私、たぶん誰かにずっとこの話をしたかったんだわ。今、わかった」

 手すりに置いたナディアの手が、吹きつけた風にかじかんで震える。

「あなたの言う通り、あの国で生きるのはつらかったのよ」

 灰の塔にいた頃も言えず、今世に戻ってからも言えなかった。

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