貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
春の予感

 ナディアの目覚めは夜が明けてから知れ渡った。

 彼女の部屋にわっと押しかけようとした獣人たちは、ベスに叱られて遠慮する羽目になっている。

「まったく、まだ目を覚ましただけで完全に回復したわけじゃないってのに」

「いいのよ、ベス。みんなに心配かけた私が悪いの」

「悪いことなんかなにひとつないよ。むしろあんたはいいことしかしなかった。ありがとうね」

 本来ならばベスにもほかに仕事がある。

 しかし彼女はメイド長の権限を使い、騒ぐ五人のメイドたちからナディアの世話を奪ったのだった。

「ずるいですー! 私たちはナディア様の専属メイドなんですよ!」

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