貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 いろいろな思いを込めて伝えると、ゲルハルトは唇の端を微かに引き上げた。

「だったら名前で呼べ。敬称はいらないから」

 耳や尾に触れさせたことよりも、そちらのほうがナディアには親愛の気持ちを理解できた。

 名を許されるほどゲルハルトの心に近づけたのだとうれしくなる。

「……ゲルハルト?」

「それでいい」

 いつの間にか曲が終わろうとしていた。

 最後の一音が響くと同時に、ゲルハルトはナディアを抱き寄せる。

 そして拍手と歓声の中、息を切らしたナディアに囁いた。

「ナディア」

 甘い響きに酔いかけたナディアは今すぐこの場から逃げ出したくなった。

< 371 / 498 >

この作品をシェア

pagetop