貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 しかし彼女を溺愛する夫には、怒り顔ですら愛おしく見えるようだ。ナディアに向けてとろけるような甘い笑みを浮かべると、彼女の頬から顎に艶めかしく指を滑らせ、唇が重なるぎりぎりの距離まで顔を寄せる。

「ここは俺の国だ。誰にも文句は言わせない」

「みんなの不満の問題じゃないのよ。私が恥ずかしいと言っているの」

「恥ずかしがるお前の顔を見るのは、いつまで経っても飽きないな」

「あなた、わざと私の話を聞かないようにしているでしょう」

「失礼な奴だな。俺ほどお前の声に耳を傾ける者もいないだろうに」

 ナディアが来る以前のゲルハルトを知るメイドたちは、まだ彼の変貌に慣れない。

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