貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 ジャンが見知らぬ女性といる可能性は念頭に置きつつ、まさかコリンヌではないだろうと思っていたナディアは自分の次の行動に逡巡し、立ち尽くした。

 そのせいで偶然彼女のほうを向いたジャンと目が合ってしまう。

「ナディア?」

 驚いた様子でジャンが目を見開く。その顔がすぐに怒りに歪んだ。

「広間で待っていろと言っただろう!」

 焦るでもなく、弁解するでもなくまず怒るのか。

 ナディアの気持ちがすうっと冷えていく。かつてのナディアならば、蒼白になって広間へ逃げ去っていただろう。

「ひとりでいれば周りの者になんと噂されるか。ですから殿下を探しに参ったのです」

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