貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 誰の声か知りながら、今は気を遣う余裕を持てなくて拒もうとする。

 しかしゲルハルトはそんなナディアを無視して倒れ込んだままの彼女のそばに膝をついた。

 そして溜息をひとつ吐き、承諾も得ずにナディアを抱き上げる。

「やっ、やめて」

 悲鳴を上げようとしたナディアだったが、涙に絡んだ声はあまりにもか細い。

「暴れるな。運ぶだけだ」

「自分で歩けます……っ」

 意外にもゲルハルトの手つきは優しかった。

 壊れ物を扱うようにナディアを横抱きにすると、少し歩いた先にある噴水の縁へと座らせる。

「どうして放っておいてくれないんですか」

< 61 / 498 >

この作品をシェア

pagetop