貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 誰と話しているかも忘れて泣いていたナディアは、突き放した言い方にひくりと喉を鳴らした。

 優しさを見せられ、心を許しかけていたからこそ余計に言葉の刃が胸に刺さる。

 どうしてという思いが強くなった時、ナディアは溢れる思いのまま口を開いていた。

「あなたになにがわかるというの? 死ぬ怖さを知らないくせに!」

 それを聞いたゲルハルトが低い唸り声を上げる。

「人間になにがわかる。おまえたちさえいなければ……!」

 毛を逆立てたゲルハルトが勢いよく立ち上がる。

 彼の長身に見下ろされる形となり、ナディアは勢いをそがれてぐっと唇を噛んだ。

< 65 / 498 >

この作品をシェア

pagetop