貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 ゲルハルトはナディアを睨みつけると、それきりなにも言わずに背を向けて立ち去る。

 ナディアは目を逸らせずに、ゲルハルトの揺れる尾を見ていた。

 やがて彼が姿を消すと、激しい後悔に襲われる。

(私、最低だ)

 彼の怒りに触れて驚いたせいで涙は止まった。

 しかし今は違う意味で泣きたい。

(ただの八つ当たりじゃない。あの人は私に手を貸してくれたのに……)

 転んだナディアの服は土にまみれていた。ゲルハルトはそれに構わず彼女を抱き上げ、噴水の縁に座らせてくれたのだ。

 そして涙を拭って落ち着くまで話を聞いてくれた。

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