政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
翌朝。
目覚めてすぐ、拓人さんの綺麗な顔が間近に映る。
普段は精悍な顔立ちにどきりとさせられることも頻繁だけど、こうして眠っている顔は無防備でどこか可愛らしさもある。意外に長いまつ毛のせいかもしれない。
静かにベッドから起き上がり、肩越しに拓人さんを振り返る。
期待、しすぎちゃったな……。
まだ目覚めなそうな寝顔を目に、ひとり寝室をあとにした。
予定より早く出張から帰ってきてくれた拓人さんと、昨晩は一緒に夕食をとり、数日ぶりに同じベッドに入った。
帰宅したときに『茉莉花に早く会いたいから』なんて言って私を抱きしめた拓人さんの普段とは違う様子に、もしかしたらと更にいつもにはない展開を期待した。
だけど、一緒にベッドに入った拓人さんはやっぱりいつも通り。私の頭を撫でてそのまま眠りへとついてしまった。
出張から帰って疲れているから当たり前。眠りについた拓人さんの寝顔を盗み見て自分にそう言い聞かせた。
だけど、それならどうしてあんな風に抱きしめて、期待するようなことを言ったのか。そう思わずにはいられなかった。
昨夜はそんなことでまたモヤモヤしたまま寝落ちしていく夜だった。