政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
「早苗……?」
拓人さんの視線の先にドアの縁から顔を出して覗く。
そこには、昨日越してきた三栗谷さん夫婦が揃ってこっちを見ていた。自宅ドア前で、ちょうど出かけるところという様子だ。
おとなりの奥さん、拓人さんのこと呼び捨てで呼んだ?
それに今、拓人さんも早苗って……?
「昨日挨拶したとき、連城って聞いてまさかとは思ってたんだけど、やっぱり拓人だったんだ」
「連城さん、ご無沙汰しております。結婚披露宴の際はご出席ありがとうございました」
「こちらこそ、ご無沙汰しております」
三栗谷夫妻が拓人さんにかける言葉を聞いて、どうやら知り合いだということを察する。
どうやら奥様のほうと元々の知り合いで、ふたりの結婚式に出席したようだ。
ご主人とも丁寧な挨拶を交わしている。
出てきた私の姿を目に、夫妻は私にも「おはようございます」と挨拶をする。
「まさか同じマンションの、しかもとなりの部屋に越してくるとはな」
「奇遇ね! 驚いちゃった」
静かなマンションの共有通路に早苗さんと拓斗さんの話し声が響く。
「また改めて一緒に食事でもしましょう。ね?」
急いでいるのか、そう言いながら早苗さんは「また!」と出かけていく。ご主人が「失礼」と挨拶をし、早苗さんの後を追っていった。