政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
初夜を失敗した夫婦
圧力鍋の中では、出来上がったビーフシチューが美味しそうにコトコト音を立てている。
火を消したタイミングでホームベーカリーの仕上がりのアラームがキッチンに響いた。
今晩の夕食は、今朝リクエストされたビーフシチューに。一緒にシーザーサラダを作り、パンを焼いた。
「いけない、そろそろ帰ってくる時間だ」
リビングに見える時計の時刻は十九時五分前。
今日は十九時過ぎには帰宅できると連絡をもらっている。
ふたり分のビーフシチューの皿を出し、ホームベーカリーからパンを取り出したところで玄関に帰宅の気配を感じた。
「おかえりなさい」
キッチンを出て急いで玄関へと向かう。
帰宅した拓人さんは、出迎えに出てきた私の姿に「ただいま」と微笑を浮かべた。
結婚して、早八か月。
秋も深まる紅葉の季節に、私──星茉莉花は許嫁であった連城拓人さんの妻となった。