政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


「は、はい!」


 慌てて返事をした私の声に、「よかった、いた」なんて反応が聞こえる。


「ケーキ出してもらってありがとう」

「あ、いえ」

「……大丈夫? 気分でも悪い?」


 どきり。

 様子がおかしいとでも思われたのかとひやりとする。


「あ、大丈夫です」

「それならいいんだけど。ごめんね」


 早苗さんはそれだけを言い、お手洗いのそばから離れていった。

 これ以上あやしまれないように、早急にお手洗いを出てリビングに向かう。


「茉莉花さん、いただいてまーす!」


 部屋に戻ると私以外の三人はすでに席につき、さっき出しておいたケーキを食べ始めていた。

 黄緑色が美しいメロンがふんだんに載るケーキに、早苗さんの顔は幸せそうに笑みを浮かべている。


「でも本当にすごかったんだから」

「うん、わかるよ。連城さんが女性にモテるのは男の俺から見ても想像がつくよ」

「隆史さんの想像なんかはるかに超えるわ。ミスコンの子たちが競ってアプローチしたり、ほんとにすごかったんだから」


 私が席を外しているあいだに、話題は拓人さんが学生時代モテたという内容で盛り上がっていたようだ。

 話題にされている拓人さんは特に照れることも喜ぶ様子もなく、上品にケーキを食べている。

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