政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
見ているのが辛くなってきて、食べ始めたケーキに視線を集中させる。
早苗さんの楽しそうな声が耳に入ってくるものの、相変わらず絶品のメロンショートケーキにひたすら口に運んだ。
「大丈夫?」
そんな中、不意にすぐそばで声をかけられハッと我に返った。
手を止め振り向くと、そこには隆史さんが私のすぐ後方に立っていた。
彼がいつの間にか立ち上がっていたのかも気づかなかったため驚く。
「あ、は、はい……」
「あまり気にしないほうがいい」
隆史さんは私の背に手を添え、少し耳元に近づくようにしてそんなことを囁く。
私が、キッチンにいるふたりの様子を気にしているのがわかったかもしれない。
「すみません」
謝る私に隆史さんは薄っすら微笑み、自分の食器を下げにいった。
人が見てわかるくらい顔に出てしまっているのだと気づかされ、気をつけなくてはと気を引き締める。
モヤモヤした気持ちを誤魔化すように、まだ半分残っているケーキの続きにフォークを入れた。