政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
「おかえりなさい。すみません、連絡もらってましたか?」
「いや。急遽羽田行が取れたんだ」
「そうでしたか。あ、急いで夕飯の支度をしますね」
キッチンに入ろうとしたところ、拓人さんに無言で腕を掴まれる。
引き寄せられて目が合って、どこか不機嫌そうな表情にどきりとした。わからないくらいわずかに眉間に皺が寄る。
「本当に、荷物を運んだだけか?」
「え……」
隆史さんが部屋に上がり込んでいたことだ。
そのせいで拓人さんがこんな顔をしているとわかり、やはり玄関を上がる隆史さんを止めるべきだったと後悔に襲われる。
「それは本当です。本当に、荷物を運んでいただいただけで。でも、ごめんなさい。拓人さんの留守中に、おとなりの方とはいえ男性を上げてしまうなんて」
もし逆の立場ならどんな気持ちになっているか考えて、絶対にそんなの嫌だと思った。
もし、帰宅した家に早苗さんがいたら……想像しただけでショックを受けそうになる。何か用事で、と説明されても、理由なんてどうでもいいと私なら思うはず。
「いや、それならいい」
拓人さんは私から手を離し、「着替えてくる」とリビングを出ていく。
もしかして、信じてもらえてない……?
離れていく広い背中をじっと見つめながら、今になってぎゅと胸が締め付けられるのを感じていた。