政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
──side takuto
「次に沖縄別館の件ですが、客室のデザイン変更の確認が上がってきています。ファイルのご確認はしていただけましたか?」
「……? あ、ああ」
「返答は来週初めまでにお願いいたします。続いて、【HOTELSTAY】十月号の原稿チェックですが──」
及川の声を聞きながら、頭の中には数日前の出来事が浮かぶ。
早苗の言っていた通り、三栗谷さんは茉莉花に気があるのかもしれない。
そうでなければ、親切で荷物を運んで部屋に上がり込むなどしないはずだ。
俺が不在なのをいいことに、茉莉花に近づいたこともいい気はしない。
もしあのタイミングで帰宅できなければ、変な気を起こしたかもしれないと思うとぞっとする。
茉莉花は三栗谷さんを上げたことを俺に謝っていた。何もなかったとはいえ、軽率だったと。
内心では嫉妬に狂っていた俺が、『本当に、荷物を運んだだけか?』などと訊いたからだろう。
どしんと構えられない自分にがっかりもしたが、何も消化できていないくせに『それならいい』とかっこつけて話を終わらせた自分にもうんざりした。
それならもうこんな風にずるずる引きずって考えるのはやめるべきなのだ。
その後、茉莉花とは普段通り過ごしているが、どこかしこりを残しているような気もしている。