迷彩服の恋人 【完全版】
第二任務*まさかの再会
制服フェチの同僚 ◇都 side◇
――〝通りすがりの男性〟に助けてもらった翌日からの1週間は、家で過ごした。
捻挫してからの最初の2日間は有給にしてもらい、今日からの3日間はテレワークで業務をこなす。
――{「ごめんなさい。岬さん。立川くん、広瀬くん。急きょ、私の営業先まで回ってもらっちゃって…。」}
――{「いいえ。大丈夫ですよ、望月さん。それより、一昨日や昨日と比べて痛みや腫れ…引きました?」}
――{「はい。まだ完全に無くなってはないですけど、かなり楽になりましたよ、岬さん。」}
私のチームのリーダーである岬 祥真さんから、PC越しにそんなお声が掛かるので、現状を素直に伝える。
ちなみに。岬さんは容姿端麗で、営業らしく健康的な日焼けをしている31歳。
彼は、とにかくセールストークが上手い。また愛妻家であることも社内では有名で、奥様は我が社の製造部にいらっしゃる“岬 一葉さん”だ。彼女も結婚前は営業だったけど、夫婦は同じ部署にいられないので…彼女の方が異動になった。
――{「望月さん、早く元気になって出てきて下さいよ。俺、寂しいです。」}
――{「僕も寂しいです。」}
はは、2人ともほんとに全然隠さないよね…"好意"を。
でも私にしてみたら…2人とも〝弟みたいな存在〟だし、今以上の関係に進展することはないと思う。
――{「立川くん、広瀬くん、ありがとね。土日挟むし…月曜からは『徐々に戻していっていい』って言われたから出社するよ。」}
――{「やった!」}
――{「はいはい、すぐ"構って"って絡みにいくのやめなさい。“望月さん”が大好きなのは分かったから。仕事してね。」}
そう言って、〝主任〟が画面に映り込んできてくれる。
いつも絶妙なタイミングでの割り込み…ありがとうございます、すごく助かってます。
立川 瞬くんは、26歳。広瀬 涼くんは、24歳。
2人とも社交的で、私なんかよりよほど仕事ができる“営業マン”だ。
2人とも中性的で綺麗な顔立ちなので、就職先はうちの会社ではなく…大手アイドル事務所だったんじゃないかと思うことがある。
――{「それから、“朝香先輩”。先輩にも結構な量の書類、捌いてもらってますよね…ありがとうございます。」}
――{「私、機械音痴だから…〝もっちゃん〟の分はノータッチ。お礼なら、岬さんと〝主任〟と〝課長〟に言って。」}
ノータッチなの!?
そこは嘘でも「やっておいたよ!」って言って下さいよ。
――{「望月、こっちは気にするな。また月曜から頼むな。」}
南課長。どうして、わざわざうちのデスクの島に来るんですか?
課長の席にいて下さいよ、そんなに心配しなくても足を捻った以外は元気ですってば!
――{「そうそう、〝望月さん〟この土日にしっかり休んでね。」}
そう言って私を甘やかすのは…課長の南 尚弥さん35歳と、主任の桧原 結花さん…32歳だ。
課長は色白で、鼻筋の通ったシャープな顔立ちである。
もちろん仕事もできるし、怒鳴らない〝紳士な上司〟だから女性社員が「キャーキャー!」と騒いでいるのは言わずもがなだ。
ただ、〝掴みどころがない人〟という印象を受けている人がいるのも確かで、私もそのうちの1人だったりする。
それから主任に関しては、現在は〝主任〟のポジションにいるけれど…私にとっては先輩であり、新人の頃の〝指導係〟だった。
だからその時の名残りで、わりと日常的には「“結花先輩”」と呼んでしまいがちだ。
ルックスは、モデルや女優のスカウトが来そうなほどの美人で……童顔の私からしたら、羨ましい限りである。
しかも、仕事もできるキャリアウーマンとくれば… もうそれは女性社員の憧れの的だ。
私自身が…誰よりも彼女に憧れているんだと思う。