迷彩服の恋人 【完全版】
――「ほんとに、日頃から望月さんにどれだけ助けていただいてたか身に染みて分かりますね。ありがとうございます。」

――「いえ、私こそ岬さんに頼ってばかりですから。月曜からまた事務処理なり何なりとやるので、使って下さい。」

こんな風に、いつもと変わらず和気藹々(あいあい)と仕事をさせてもらえることに…仕事仲間に恵まれていることに感謝して終業時間まで過ごした――。

**

「あっ!おはようございます、“結花(ゆいか)先輩”。1週間ほどご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」

"もうあと2日で下旬になる"という…月曜の朝――。
営業部のフロアに向かう“結花(ゆいか)先輩”を見つけたので、追いかけて声を掛ける。

「都ちゃん!おはよう。そっか、今日から復帰か。…大変だったね。いいのよ。結局、後半の3日間もテレワークで働いてくれたんだし。」

「そういえば、在宅ワーク中に言ってた"あの話"詳しく…。今日のランチは私とだからね。」

「あれ以上、話すこと無いですって!第一、相手の名前も分からないんですよ?」

先輩には、"見知らぬ彼に助けられた話"は共有済みだ。

「も〜!何で聞いておかないかな…。それに相手も相手よ。いくら急いでても名乗るでしょ、普通。」

「でも、相当急がれてましたから…。」

「〝名乗らぬ王子様〟っていうのは想定外だったけど、都ちゃんにも〝春〟到来かもね。」

「そんなんじゃないですよ、たぶん…。」

「まぁ、ゆっくり見極めるといいわ。〝恋〟か、そうじゃないかを…。そうそう、恋といえば…“栗原(くりはら)”と“花村(はなむら)”がまた合コンの話題に入ってきたわ。まぁ、橋本さんに頼み込まれたのを彼女たちに聞かれたのがまずかったんだけど…。しかも“(ともえ)”まで入ってきて…ほんとに面倒よ。」

「…で、やるんですか?合コン。… っていうか、そんなことしてて先輩の〝彼氏さん〟怒らないんですか?」

結花(ゆいか)先輩” 主催で、うちのチームの“朝香 巴(あさか ともえ)先輩”…32歳が【彼氏と別れる度に行われる合コン】は、営業部ではもはや"日常"と化している。

そして、今回はそこに“橋本(はしもと)千秋(ちあき)”さん…25歳や、〝今年入社して来た新人〟の“花村(はなむら)佳奈(かな)”…“栗原(くりはら)万里奈(まりな)”も加わるらしい。

この橋本さん、仕事ぶりは『第二の桧原』と言われていて…「外見と性格は望月に似てる」なんて言われている。
…私と似てるだなんて、橋本さんに失礼だと思う。

決して派手な風貌ではないけど…彼女は女磨きを怠っていないし、相手によって〝言いたいことが言えなくなるタイプの人〟ではない。
凛としていて、むしろ“結花(ゆいか)先輩” のようにズバズバ言えるし…カッコイイとすら思う。

ただ、共通点が無いわけではないと思う。
橋本さんは、以前「【制服フェチ】だ」と私と“結花(ゆいか)先輩” に公表してくれたことがある。

それ以降は、趣味の合う範囲で仲良くさせてもらっている。

ちなみに、過去には消防士さんや救急救命士さんと付き合ったこともあると言っていた。

制服姿カッコイイから、分からなくもない。
…というか。むしろ、めっちゃ分かるっ!

私みたいに、服を自分で作って着たりはしないらしいけど〝ライトなオタク〟感はあるのだ。

一方、花村と栗原は単に〝気が多い、男にチヤホヤされたい女〟のタイプと思っているから…あまり近づきたくない。〝私が一番苦手なタイプの女子〟だ。

〝22〟ねぇ…若いなー。
20代前半って無駄にパワーあるよね。
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