迷彩服の恋人 【完全版】

まさかの再会 ◇都 side◇

「花村さん?望月先輩にマウント取るなら、この合コン無しにしてもいいのよ。だいたい、あなたの業務態度…目に余るものがある。あんまり酷いと査定落とすからね?」

結花先輩、ありがとうございます。
そう言ってもらえるだけで救われますよ。

「桧原主任怖いですよ、冗談じゃないですか。」

「あなたが言うと、冗談に聞こえないの。」

「でも、〝もっちゃん〟もそろそろ〝3次元の男〟にいった方が良いのは確かよねー。」

「そうですよ、望月先輩は(もと)が良いんですから。もったいない。アニメキャラに恋とか言ってないで、リアルのメンズに向かいましょ。」

栗原さんも朝香先輩も、余計なお世話ですー!

…あー。やっぱ帰りたい。
ハッ! ダメダメ!何言ってるの、私は!
結花先輩と、〝先輩の彼氏さん〟の顔立てるって決めたんだから、やり遂げるよ!

心の中の毒を出さないように耐えていると、私の心境を察した結花先輩が「気にしちゃダメよ、ところで――。」と隣へ来て他の話題を振ってくれた。

本当にありがたい…。

先輩との会話に集中していたら、お店に着いていた。

**

「ごめん、隼人(はやと)。待たせちゃった。」

「結花、お疲れ様。いいよ、金曜だし…会議だったんだろ?」

今が18時15分――。
いったい、何時の待ち合わせだったんだろう?

「あと、〝彼女〟のおめかしにちょっとね。」

そう言って、結花先輩は私の肩を抱き…そこに頭をコテっと傾けた。

この人が先輩の〝彼氏さん〟か……!
顔は〝インテリ系のイケメン〟で濃くなくて、体型は筋肉質なんだ…。

どうやら、先輩が連絡したタイミングで外に出てきてくれたみたい。
……優しい人だな。

「結花がお世話になってます。初めまして、志貴(しき) 隼人(はやと)と申します。〝志〟に貴族の〝貴〟と書いて〝志貴〟です。ひとまず…外もなんですし、中入りましょうか。」

〝志貴さん〟! なんてカッコイイお名前!

そういえば、〝助けてくれたあの人〟も筋肉質だったなぁ…。
…ん?ちょっと待って。私、なんで〝あの人〟のこと思い出してるの!?


顔が結花先輩好みなのは納得!
でも体型の好みは意外だった。

そんなことを思いながら、志貴さんや結花先輩の後ろをついていく。

そして店内の奥のスペースに行ってみると、数人の男性がテーブルを囲んでいた――。

「あっ、結花さん…お久しぶりです!」

「えぇー!志貴さんの彼女さん、美人すぎません?」

男性陣は、まず結花先輩に反応した。

麻生(あそう)。お前、相変わらず馴れ馴れしいな!気安く『結花さん』なんて呼ぶんじゃねぇ。…おっ、中崎(なかざき)。いいね!分かってんじゃん!」

どうも、〝麻生〟と呼ばれた人は結花先輩と面識があって、〝中崎〟と呼ばれた人は先輩と初めて会うみたい…なんて何気に人間観察を始めてみる。

会話がひと段落したところで、志貴さんが私たちも座るよう…声を掛けてくれた。

「そういえば…。男性陣(そっち)の人数足りてない…。宮原くん遅れてるの?」

「宮原、"外禁(がいきん)"くらってさ…代わりに土岐(とき)が来るんだけど、課業(かぎょう)終わりに"上"に捕まってたな。」

なるほど。〝トキさん〟って方が、〝宮原さん〟って方の代わりに来ることになったのね。
< 21 / 52 >

この作品をシェア

pagetop