迷彩服の恋人 【完全版】
それをネタに、俺の苦手とする合コンに連れ出されることになろうとは――。

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「土岐。明後日…【残留】、【当直】、【警衛】は?」

「全部(まぬが)れてますけど…何ですか。」

「頼む!明後日の合コン来てくれないか。今回セッティング頼んできたの宮原だったんだけど、アイツ先週末の外出時の帰舎時間…20分超過で今週末は"外禁(がいきん)"になったらしいんだ。」

「俺が"そういうこと"苦手なのを、あなたは知ってるでしょう。…他を当たって下さいよ。」

「中崎は元から行くメンツだったし、加納で都合がつくならそうしたよ。でもコイツ帰省するだろ。それに俺より年上なんか連れて行けねぇだろ、結花とその同期が最年長で…あとは20代だって言うんだから!……それに――。」

「それに、何ですか?」

「"――――"。」

「…っ!なんすか、その理屈!あー。もう、分かりましたって!まぁ、先輩と桧原さんには何かと面倒見てもらってるので今回は行きますよ。」

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――「女を忘れるなら、女と関われ。」

耳打ちにしても言うか?"こんなこと"。

それに――。「まだ気になってるんだろ?〝捻挫した民間人女性〟のこと。その女性が〝結花の知り合い〟ってことも無くはないし…。それに、【女性と関わるコツ】はやっぱり女性の方がよく分かってるから、恋とか愛とかは置いといたとしても関わり方を知るには良い機会だと思うぞ?…『恋愛しろ』って話じゃなくて、"女性との距離感"とか"絡まれたくない女からの防衛方法"とかを結花から教えてもらう機会にすれば?」…なんて言うから。

上手く口車に乗せられた感じは否めないけど、確かに先輩より年上の男性が来たら女性陣も気まずいかもしれないし……俺たちは確実にやりにくい。

そう思って…気乗りはしていないが、最終的にOKを出した。

しかし。さすがに、今日の課業を終え… 先輩と中崎と準備を進めて"行くか!"って時に、“中原2佐”から【呼び出し】をくらったのは正直…()えた。

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「(コンコン!)…失礼します!お呼びでしょうか、“中原2佐”。」

「外出しようとしていたところで呼び止めて申し訳ない。」

「いえ、問題ありません!」

「“土岐士長”、まぁ…座りなさい。さっそく本題だが…。昨年、君より年上の士長の推薦をさせてもらうにあたり、見送ってもらった【例の件】だが…。今年は枠もあるし、うちの駐屯地からは君と他を数名推薦したいと考えている。…どうだろうか?」

「“中原2佐”のご推薦をいただけるとは…。身に余るお言葉をいただき、光栄であります!」

「まぁ。今年は横須賀駐屯地の55周年記念行事もあって、例年より開始時期が一月半は遅くなるから…返事は今でなくてもいい。よく検討するように。」

「はっ!」
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確かに内容としては重要な話だったし、"去年実現できなかったこと"が今年できそうなのはありがたいけど…。
本題の後の【自衛隊主催の婚活パーティー】の打診は、今日じゃなくてもいい話だったし…勘弁してくれ。

1(イチ), 2(), 1(イチ), 2()…。」

俺は、今日までのここ最近の出来事を思い出しながら、訓練並みに走る。
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