迷彩服の恋人 【完全版】
「あー。なるほど。…あっ!だからさっき濁されてたんですね。でも好きなことがあるのは良いことですよ。それがあるから仕事に励むし、気分転換にもなるわけですし。それに、【突き詰めることができる】っていうのは【専門性が高い】とも言える。」
彼はそう言いながら吸い終えた煙草の処理をして、携帯灰皿を自身のジーンズのポケットに引っ掛けていた。
「そうなんですよ!"推し活"があるから、仕事も頑張れるわけで…。そっか、【専門性が高い】。そんな風に考えたことなかったです。確かに、〝専門家〟って言われてる人たちって、特定の分野のこと…よく知ってますもんね。精通してるというか。」
1つも否定せずに聞いてくれるなんて…。
ありがとうございます、土岐さん。
「僕も…。車の運転とイジるのがすごく好きで、自動車整備士の免許を1級まで持ってますけど…【専門性が高い】おかげで自衛隊の特殊車両なんかの整備も任される。もちろん。整備士仲間以外の人間にエンジンの話とかしちゃって、〝周り〟に引かれた経験もあります。だから望月さんが経験した"嫌な気持ち"…僕も分かります。ほんと面倒ですよね。でも、やっぱり…。趣味とか、気が抜ける瞬間とかが無いと…人は確実に壊れます。不健康になるというか…。人の命を守るための仕事している僕たちが、まずは健康体じゃないと。陸自の隊員は特に体が資本なので。」
「土岐さん……。」
カッコイイ…。
仕事に誇りを持ってるんだろうな。
「あのー。望月さん、気になってることがあるので聞いてもいいですか?」
「何でしょう?」
「答えたくないならそれでも構わないんですけど…。"周りからもう29にもなるのに、アニメから卒業しなさいとか地方遠征とかバカじゃないの!?お金かけすぎ"とか言われるってことなんですけど…。それを言うのは、あなたの身近にいる人ですか?」
――彼にそう聞かれて、ドキッとするし…なぜか泣きそうになる。
「結花先輩以外のこちら側の〝今日のメンバー〟と、母に――。」
――こんなこと、会って2度目の土岐さんに言うことじゃないのに……。
「お母様が…?」
「…はい。母は、私に対して昔から過干渉なところがあって…。私のやること成すことに対して否定的な考えで向かってくるのでケンカになっちゃうんです。」
「えぇ。」
「私をずっと子供だと思ってるのか、支配欲じみたものがあるのか…分からないですけど、私のことを把握したがったり自分の都合良く動くよう言ってくるんです。"早く結婚してほしい"…そんな母の気持ちも分からなくはないんですけど、だからと言って"合コンに絶対出てきなさい、あんたの晩ご飯…今日は用意しないから"みたいな圧をかけてくるのっておかしいと思いませんか。」
――ダメ、これ以上は。
土岐さんも驚くし、それこそ引くから…。
そう思うのに……言葉が口を突いて、スルスル出ていってしまう。
ただ、それでも彼は時折"はい"とか"えぇ"と 相槌を打ち、静かに話を聞いてくれる。
「朝香先輩たちも強引に私に『OK』と言わせて連れてくるし、〝私の苦手な人たち〟はみんな私の希望なんて聞いてくれない。なのに、"好きなこと"は否定する。私は……私の話を聞いてほしいだけなのに…っ。…ごめんなさい、こんなことまで話すつもりじゃなかったのに――。」
途中で涙声になってきてしまう。
私のバカ……。
自分の感情を勝手に喋って、勝手に泣いてる…。
土岐さん、絶対困ってるのに…少しずつ流れてくる涙は止まってくれそうにない。
彼はそう言いながら吸い終えた煙草の処理をして、携帯灰皿を自身のジーンズのポケットに引っ掛けていた。
「そうなんですよ!"推し活"があるから、仕事も頑張れるわけで…。そっか、【専門性が高い】。そんな風に考えたことなかったです。確かに、〝専門家〟って言われてる人たちって、特定の分野のこと…よく知ってますもんね。精通してるというか。」
1つも否定せずに聞いてくれるなんて…。
ありがとうございます、土岐さん。
「僕も…。車の運転とイジるのがすごく好きで、自動車整備士の免許を1級まで持ってますけど…【専門性が高い】おかげで自衛隊の特殊車両なんかの整備も任される。もちろん。整備士仲間以外の人間にエンジンの話とかしちゃって、〝周り〟に引かれた経験もあります。だから望月さんが経験した"嫌な気持ち"…僕も分かります。ほんと面倒ですよね。でも、やっぱり…。趣味とか、気が抜ける瞬間とかが無いと…人は確実に壊れます。不健康になるというか…。人の命を守るための仕事している僕たちが、まずは健康体じゃないと。陸自の隊員は特に体が資本なので。」
「土岐さん……。」
カッコイイ…。
仕事に誇りを持ってるんだろうな。
「あのー。望月さん、気になってることがあるので聞いてもいいですか?」
「何でしょう?」
「答えたくないならそれでも構わないんですけど…。"周りからもう29にもなるのに、アニメから卒業しなさいとか地方遠征とかバカじゃないの!?お金かけすぎ"とか言われるってことなんですけど…。それを言うのは、あなたの身近にいる人ですか?」
――彼にそう聞かれて、ドキッとするし…なぜか泣きそうになる。
「結花先輩以外のこちら側の〝今日のメンバー〟と、母に――。」
――こんなこと、会って2度目の土岐さんに言うことじゃないのに……。
「お母様が…?」
「…はい。母は、私に対して昔から過干渉なところがあって…。私のやること成すことに対して否定的な考えで向かってくるのでケンカになっちゃうんです。」
「えぇ。」
「私をずっと子供だと思ってるのか、支配欲じみたものがあるのか…分からないですけど、私のことを把握したがったり自分の都合良く動くよう言ってくるんです。"早く結婚してほしい"…そんな母の気持ちも分からなくはないんですけど、だからと言って"合コンに絶対出てきなさい、あんたの晩ご飯…今日は用意しないから"みたいな圧をかけてくるのっておかしいと思いませんか。」
――ダメ、これ以上は。
土岐さんも驚くし、それこそ引くから…。
そう思うのに……言葉が口を突いて、スルスル出ていってしまう。
ただ、それでも彼は時折"はい"とか"えぇ"と 相槌を打ち、静かに話を聞いてくれる。
「朝香先輩たちも強引に私に『OK』と言わせて連れてくるし、〝私の苦手な人たち〟はみんな私の希望なんて聞いてくれない。なのに、"好きなこと"は否定する。私は……私の話を聞いてほしいだけなのに…っ。…ごめんなさい、こんなことまで話すつもりじゃなかったのに――。」
途中で涙声になってきてしまう。
私のバカ……。
自分の感情を勝手に喋って、勝手に泣いてる…。
土岐さん、絶対困ってるのに…少しずつ流れてくる涙は止まってくれそうにない。