迷彩服の恋人 【完全版】
初めてのメッセージ ◇都 side◇
「えー!〝もっちゃん〟だけ全然出さないのおかしくない?」
「それはそうですね、ズルくないですか?」
朝香先輩と花村さんがイタイところを突いてくる。
「何がよ?当然でしょう。なにせ、あんたたち3人が無理矢理連れてきたんだから!…何なら、巴。私はあんたから都ちゃんの分、徴収したいぐらいなんだけど?」
結花先輩の眉毛が少し動いた気がする。
「結花、怖いって。はいはい、私が悪かったわよ。ごめんね、〝もっちゃん〟。」
全然気持ちが入ってないですねー。先輩。
まぁ、いいように使われるのは母で慣れちゃってるし…わざわざ言い返すのも面倒なので、もういいですけど。
「いや?土岐にも払わせないつもりだから、"望月さんだけ"ってことはないよ。」
志貴さんからのアイコンタクトを受け取った土岐さんは事が上手く進むようにか
"微笑み"で肯定の返事を返していた。
志貴さんすごいな、結局土岐さんにも払わせない方向に話を持っていった。
「それに…どちらにせよ、男性陣の方が多く払ってくれるってことで話はまとまってるわよ。…で。何だかんだ言ってるけど、一番多く出してくれるの隼人だからね?」
柔らかく言った志貴さんとは対照的に、結花先輩は"これ以上言ってくるな!"と釘を刺すかのようにピシャリと言い放った。
「さぁ。じゃあ、朝香さんと花村さんと栗原さんは1000円ね。あとは俺たちで精算するから、この話はこれで終わり。」
「明日の夕食は、隼人の食べたいもの作るから…考えといてね。今日はご馳走様。」
「え?明日、結花ん家でゆっくり寝てたり…のんびりしてても怒んない?」
「明日はその予定ね、良いんじゃない?のんびりしましょ。私が、隼人が『ゆっくりしたい』って言った時に『遠出したい』とか駄々こねたことあった?」
「ないな。」
「でしょ?」
なんてスマートな会話なんだろう…。
手料理かぁ、先輩が作ったご飯美味しいもんなー。
〝彼女〟ならではのお礼の仕方だよね。
志貴さん、本当に嬉しそう。
「ちょっと、惚気ないでよ!結花。」
「はぁ?普通の会話の範囲までとやかく言われる筋合いはないわよ。そう思うなら、巴も作ってあげれば良いんじゃない?麻生くんに!」
結花先輩にそうツッコまれて、一瞬固まる朝香先輩。
「あんたの態度見てたら誰だって分かるわ。…さぁ、男性陣。身分証と財布とスマホは持った?忘れたら首が飛ぶわよ。」
「忘れもの無し、準備よし!」
男性陣全員が、号令のように口を揃えて言う。
もちろんお店の中だから、声を張り上げているわけではないけれど。
「だから"あの時"確認してたんだ…。」
「そうですね。」
ポソッと言っただけのつもりだったのに、土岐さんに拾われるとは思わなかった。……何だか恥ずかしいな。
「自衛隊の身分証は、僕たちの【命の次に大事なもの】ですね。失くしたら、本当に首が飛ぶので確認は必須なんです。」
…あっ!そういえば、"あの紙"って…もう捨てられちゃったかな?
家に帰ってから自衛隊のことを調べたりするのにも役立ちそうだし…なんか捨てられたくない気分。
「そうなんですね。……あっ!そういえば、"さっきの紙"って捨てちゃいました?あの…土岐さんが用語とか階級とか書いて下さった…。」
「…ん?後で捨てようと思ってたけど、まだ俺が持ってるよ。…欲しい?」
そう言って、志貴さんが自身のチノパンのヒップポケットから綺麗な四つ折りに畳まれた"それ"を取り出した。
「あ、あの…私が貰っても支障が無いなら…。」
「階級の説明が書いてあるだけだから、別に問題は無いけど…。土岐、良い?望月さんに渡して。」
「え?問題は無いですけど、残すならもうちょっと綺麗に書けばよかったな。…でもまぁ。望月さんが、僕の汚い走り書きでもいいって言うならあげて下さい。」
「じゃあ、はい。」
「ありがとうございます。」
こんな会話をしつつ、私たちは〔Nature〕の外に出た。
そして、お店の前で志貴さんが麻生さんたちにこう告げる。
「それはそうですね、ズルくないですか?」
朝香先輩と花村さんがイタイところを突いてくる。
「何がよ?当然でしょう。なにせ、あんたたち3人が無理矢理連れてきたんだから!…何なら、巴。私はあんたから都ちゃんの分、徴収したいぐらいなんだけど?」
結花先輩の眉毛が少し動いた気がする。
「結花、怖いって。はいはい、私が悪かったわよ。ごめんね、〝もっちゃん〟。」
全然気持ちが入ってないですねー。先輩。
まぁ、いいように使われるのは母で慣れちゃってるし…わざわざ言い返すのも面倒なので、もういいですけど。
「いや?土岐にも払わせないつもりだから、"望月さんだけ"ってことはないよ。」
志貴さんからのアイコンタクトを受け取った土岐さんは事が上手く進むようにか
"微笑み"で肯定の返事を返していた。
志貴さんすごいな、結局土岐さんにも払わせない方向に話を持っていった。
「それに…どちらにせよ、男性陣の方が多く払ってくれるってことで話はまとまってるわよ。…で。何だかんだ言ってるけど、一番多く出してくれるの隼人だからね?」
柔らかく言った志貴さんとは対照的に、結花先輩は"これ以上言ってくるな!"と釘を刺すかのようにピシャリと言い放った。
「さぁ。じゃあ、朝香さんと花村さんと栗原さんは1000円ね。あとは俺たちで精算するから、この話はこれで終わり。」
「明日の夕食は、隼人の食べたいもの作るから…考えといてね。今日はご馳走様。」
「え?明日、結花ん家でゆっくり寝てたり…のんびりしてても怒んない?」
「明日はその予定ね、良いんじゃない?のんびりしましょ。私が、隼人が『ゆっくりしたい』って言った時に『遠出したい』とか駄々こねたことあった?」
「ないな。」
「でしょ?」
なんてスマートな会話なんだろう…。
手料理かぁ、先輩が作ったご飯美味しいもんなー。
〝彼女〟ならではのお礼の仕方だよね。
志貴さん、本当に嬉しそう。
「ちょっと、惚気ないでよ!結花。」
「はぁ?普通の会話の範囲までとやかく言われる筋合いはないわよ。そう思うなら、巴も作ってあげれば良いんじゃない?麻生くんに!」
結花先輩にそうツッコまれて、一瞬固まる朝香先輩。
「あんたの態度見てたら誰だって分かるわ。…さぁ、男性陣。身分証と財布とスマホは持った?忘れたら首が飛ぶわよ。」
「忘れもの無し、準備よし!」
男性陣全員が、号令のように口を揃えて言う。
もちろんお店の中だから、声を張り上げているわけではないけれど。
「だから"あの時"確認してたんだ…。」
「そうですね。」
ポソッと言っただけのつもりだったのに、土岐さんに拾われるとは思わなかった。……何だか恥ずかしいな。
「自衛隊の身分証は、僕たちの【命の次に大事なもの】ですね。失くしたら、本当に首が飛ぶので確認は必須なんです。」
…あっ!そういえば、"あの紙"って…もう捨てられちゃったかな?
家に帰ってから自衛隊のことを調べたりするのにも役立ちそうだし…なんか捨てられたくない気分。
「そうなんですね。……あっ!そういえば、"さっきの紙"って捨てちゃいました?あの…土岐さんが用語とか階級とか書いて下さった…。」
「…ん?後で捨てようと思ってたけど、まだ俺が持ってるよ。…欲しい?」
そう言って、志貴さんが自身のチノパンのヒップポケットから綺麗な四つ折りに畳まれた"それ"を取り出した。
「あ、あの…私が貰っても支障が無いなら…。」
「階級の説明が書いてあるだけだから、別に問題は無いけど…。土岐、良い?望月さんに渡して。」
「え?問題は無いですけど、残すならもうちょっと綺麗に書けばよかったな。…でもまぁ。望月さんが、僕の汚い走り書きでもいいって言うならあげて下さい。」
「じゃあ、はい。」
「ありがとうございます。」
こんな会話をしつつ、私たちは〔Nature〕の外に出た。
そして、お店の前で志貴さんが麻生さんたちにこう告げる。