迷彩服の恋人 【完全版】
新宿から渋谷に移動してる間に、ちょうど開店時間を過ぎたショッピングモールにはお客さんが続々と入っていくのが少し離れたところからでも見える。

土日の渋谷のショッピングモール……まぁ、ある程度は予測してたけど。

こんなんだったか!?
久しぶりすぎて感覚忘れてるな…はは。
入っていくのが億劫(おっくう)になるぐらい混んでるんだが。

「さてと。〝(ともえ)ちゃん〟とのデート着買うのと、土岐さんの【ファッションセンス修行】をしますか!」

げんなりする俺をよそに、麻生さんはすでにハイテンションだ。

何ですか、【ファッションセンス修行】って。

確かに、ポロシャツにジーンズにハンチング帽なんて…自分でもダサいとは思いますけど。
仕方ないじゃないですか、帰る気満々だったんだから。

それに、〝(ともえ)ちゃん〟って…!
まぁ、朝香さんも麻生さんみたいなノリのタイプ好きそうではあったけど、いくらなんでも距離詰めるの早すぎだろう。

言いたいことは山ほどあるが、それらを全部呑み込み代わりの言葉を口にした。

「俺の服選びは、本当に今度で良いですから。……とにかくお目当てがあるんでしょう?それ買いに行きましょう。」

ここから2時間半ほど麻生さんたちの買い物に付き合って、昼飯を食べた後は「本屋に行きたい」と言い…何とか単独行動を取ることに成功した。

――しっかし、これは3,4万は使ってんじゃないだろうか…。麻生さん。

目当てだった大型書店の一角にあるイートインスペースで、俺は自分の隣にある椅子の上に置いた麻生さんの荷物の量を見て…ふと思った。

まぁ、金の使い方なんて人それぞれ違うから別にいいんだが。

さて。好きな写真家の写真集や、気になっていた小説も何冊かあったし…エスプレッソ1杯をじっくりと飲みながら、手に取ってきた本を買うか検討しよう。

そう思って、1時間半ぐらい粘った…。そして、時刻は1500(ヒトゴーマルマル)

「そろそろ様子見に行くか…。ほんとに帰りたいしな。」

こうして、俺は目当てだった【車の写真集】と…あらすじを見て興味本位で持ってきたミステリー小説の会計を済ませて、書店を後にした。

**

「えっ、もう帰るんですか!?」

「言ったじゃないですか、麻生さん。俺は外出許可、今日までしか取ってないって…。帰ったら、靴磨きやら飯やら風呂やら…最終点呼までにやるべき日課があるでしょう?」

「確かにそうですけど…。」

麻生さんは不満気な声を上げる。

仕方ない、あの手を使おう。

「これ、晩飯代の足しにしてもらって良いので…解放して下さい。」

「おっと。…なら、しょーがないですね!分かりましたよ。その代わり、俺の荷物預けていいですか?」

やっぱり飯代狙いだよなぁ…この人は。

まぁ…今日は中崎と古川もいるから、もともと少し出してやるつもりだったけど…。
飯代と荷物運びで解放されるなら、安いもんだしな。

「まぁ、それは引き受けましょう。」

こうして俺は、麻生さんの荷物を預かって世田谷駐屯地へ帰ることになった。


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