迷彩服の恋人 【完全版】
「体勢…つらくないですか?足に負担はかかっていませんか?」
「だ、大丈夫です。」
そう返事が返ってきたので俺は安堵し、ドアを静かに閉める。
「忘れもの無し、準備よし。」
…あ、癖でいつもの"確認作業"を音声化しちまった。
特に〝彼女〟からのツッコミは無いが、不思議そうにはしている。
それでも聞いてこないところに、俺は好感を持てた。
察しがよく、優しい人なんだろうな。
そんな印象を勝手に抱きつつ、俺は〝転んで負傷した女性〟と民間の病院へ向かう。
**
「…あの、連絡したいところが複数あるのですが、電話させていただいても大丈夫でしょうか?」
「どうぞ。ご家族への連絡もしなければならないでしょうし…。」
〝彼女〟がそう断りを入れてくるので、"律儀な人だな"と思いながら俺は「どうぞ」と返した。
「ありがとうございます。それでは――。ふぅ〜。……あっ。もしもし、先輩。急で申し訳ないんですが…同窓会行けなくなりました。向かってたんですけど、さっき転んじゃって。足が痛いので――。」
{「はあ!?何してんのよ、バカじゃないの!?」}
はぁ!?「ケガした」って言ってるのに心配もしないのかよ。どんな先輩だよ。
それに"周りにまで聞こえる音量"で罵ってんじゃねぇ。
「先輩、そんな大声出さないで下さいよ。――それはまた都合が合えば…。『また計画する』って言っても、先輩自身がお忙しいじゃないですか。私も2,3ヶ月先の予定なんてまだ分からないです。――切りますね、失礼します。」
大変そうだな…。でも、言葉を濁して上手く"逃げてた"な。
俺もこれぐらい言えたらいいんだが――。
「失礼しました、お聞き苦しい内容を――。」
「いえ…。」
もっと気の利いたこと言えないのか、俺は!
「はぁ〜。…あっ、溜息なんて…すみません。も、もう1件失礼しますね。」
さっきより溜息が大きくて憂鬱そうですけど…大丈夫ですか?
「…ふぅ。――もしもし。お母さん、私…。――まだ着いてない…っていうか、転んで捻挫しちゃったから同窓会どころじゃない。今は〝通りすがりに助けてくれた人〟と病院向かってる。――あー。もう!分かってるって、お礼なら言うよ。もちろん。」
母親と話すの、苦手なのだろうか…。
「…あれ?朝也、あんた今日仕事でしょう?――あぁ、そうなのね。おかえり。――あぁ、そうそう。転んで足挫いて、今〝通りすがりに助けてくれた人〟と病院向かってて――。」
あぁ…病院名ですね、失礼しました。
俺はスマホのマップの病院名を指で指し示した。
「うん、そこの病院。急激に腫れてきてはないから骨折はしてないと思うけど、一応診てもらった方がいいって〝助けてくれた人〟がアドバイスくれたから…それでね。――うん。迎えに来てくれないかな。――ごめんね、帰ってきたばっかりなのに。ありがと。あっ!あと着替え持ってきてくれると助かる。――じゃあ、また後でね。」
「ご家族の方と連絡が取れてよかったです。」
「すみません。騒がしくしてしまって…。」
「いいえ、とんでもないです。…さて、もうすぐ着きますよ。」
ご家庭のことは深入りするものじゃないと思い、俺は話題を変える。
そう言ってから、ものの数百メートル走れば…目的地である病院に到着したのだった。
「だ、大丈夫です。」
そう返事が返ってきたので俺は安堵し、ドアを静かに閉める。
「忘れもの無し、準備よし。」
…あ、癖でいつもの"確認作業"を音声化しちまった。
特に〝彼女〟からのツッコミは無いが、不思議そうにはしている。
それでも聞いてこないところに、俺は好感を持てた。
察しがよく、優しい人なんだろうな。
そんな印象を勝手に抱きつつ、俺は〝転んで負傷した女性〟と民間の病院へ向かう。
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「…あの、連絡したいところが複数あるのですが、電話させていただいても大丈夫でしょうか?」
「どうぞ。ご家族への連絡もしなければならないでしょうし…。」
〝彼女〟がそう断りを入れてくるので、"律儀な人だな"と思いながら俺は「どうぞ」と返した。
「ありがとうございます。それでは――。ふぅ〜。……あっ。もしもし、先輩。急で申し訳ないんですが…同窓会行けなくなりました。向かってたんですけど、さっき転んじゃって。足が痛いので――。」
{「はあ!?何してんのよ、バカじゃないの!?」}
はぁ!?「ケガした」って言ってるのに心配もしないのかよ。どんな先輩だよ。
それに"周りにまで聞こえる音量"で罵ってんじゃねぇ。
「先輩、そんな大声出さないで下さいよ。――それはまた都合が合えば…。『また計画する』って言っても、先輩自身がお忙しいじゃないですか。私も2,3ヶ月先の予定なんてまだ分からないです。――切りますね、失礼します。」
大変そうだな…。でも、言葉を濁して上手く"逃げてた"な。
俺もこれぐらい言えたらいいんだが――。
「失礼しました、お聞き苦しい内容を――。」
「いえ…。」
もっと気の利いたこと言えないのか、俺は!
「はぁ〜。…あっ、溜息なんて…すみません。も、もう1件失礼しますね。」
さっきより溜息が大きくて憂鬱そうですけど…大丈夫ですか?
「…ふぅ。――もしもし。お母さん、私…。――まだ着いてない…っていうか、転んで捻挫しちゃったから同窓会どころじゃない。今は〝通りすがりに助けてくれた人〟と病院向かってる。――あー。もう!分かってるって、お礼なら言うよ。もちろん。」
母親と話すの、苦手なのだろうか…。
「…あれ?朝也、あんた今日仕事でしょう?――あぁ、そうなのね。おかえり。――あぁ、そうそう。転んで足挫いて、今〝通りすがりに助けてくれた人〟と病院向かってて――。」
あぁ…病院名ですね、失礼しました。
俺はスマホのマップの病院名を指で指し示した。
「うん、そこの病院。急激に腫れてきてはないから骨折はしてないと思うけど、一応診てもらった方がいいって〝助けてくれた人〟がアドバイスくれたから…それでね。――うん。迎えに来てくれないかな。――ごめんね、帰ってきたばっかりなのに。ありがと。あっ!あと着替え持ってきてくれると助かる。――じゃあ、また後でね。」
「ご家族の方と連絡が取れてよかったです。」
「すみません。騒がしくしてしまって…。」
「いいえ、とんでもないです。…さて、もうすぐ着きますよ。」
ご家庭のことは深入りするものじゃないと思い、俺は話題を変える。
そう言ってから、ものの数百メートル走れば…目的地である病院に到着したのだった。