インビジブル・ブルー
僕がこの変態と出会ったのは、ちょうど一ヶ月前のことだった。

今でもそうだが、ガクは月に何度か地下で緊縛ショーを開き、結構な額の生活資金を稼いでいた。

そのショーに出演していた女を山に連れ込み、偶然見つけた小屋で気が狂うまで犯しまくろうとしたところ、それがつまりこの僕の家だったというわけだ。

ガクは僕の隣で女を縛り、一晩中犯し続けた。僕は黙って筆を執り、よがり狂う女のうなじを描き、それをガクに売りつけた。

以来、どういう訳かガクはこの家に転がり込んでしまった。

俗世の喧噪と隔絶された森の中で、男二人の同居生活が始まった。

ガクは時々麻縄を鞄に放り込み、都心にまで生活費を稼ぎに出る。僕は彼に部屋を提供する代わり、必要な画材を調達してきてもらう。食費も水も自家発電のガス代もこっち持ち。

あまり割のいい交換条件ではないが、それでもここを動かずに済むというのは有り難かった。

それに、今はガクが僕の絵を売りさばいてくれてもいる。それを考えれば、ことさらに追い出す理由も見つからなかった。

「何故こんな森の奥に?」

とは、ガクは聞かない。聞かれたとしても話すつもりもない。

だから、僕もまた、なぜここに居座るのかとは聞かなかった。

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