インビジブル・ブルー
「痛み……」

僕はポツリと呟いた。

誰に言うわけでもない。むしろ自分に問いかけるように、僕は口を開いた。

「僕がそうだった」

「アンタが?」

「ああ。ちょうどこの女と同じ年ごろだったかな。あの頃の僕は、傷みでしか自分がまだ生きていることを実感できなかった」

きっとこの女も……

そう言いかけて、言葉を逃がした。

『私の処女を奪ってよ』

少女はそう言っていた。『犯せ』とも言っていた。

……そうか。

そうなのか。

あるいはそれもリストカットの延長にすぎない衝動なのではないか。と、ふとそんな疑念が湧き起こった。

いずれにせよ、この少女は僕やガクと同じ人種なのだ。



僕は憐憫とも悲哀ともつかぬ目で、痛々しく縛られた少女の瞳を探った。

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