インビジブル・ブルー
さっさと画材一式を鞄に放り込み、カンバスを手に玄関の扉を押す。

レイをこの家に残したまま、変態縄師と二人っきりにさせることに少しばかり抵抗を感じた。

が、知ったことではない。

あの凶暴な女が大人しくなれば、こっちの身の危険は減るのだ。そう言いきかせて靴を履いた。

「……今日はどうするんだ?」

聞いてしまって後悔した。案の定、ガクがニヤリと微笑んだ。

「どうって?」

「街には出ないのかと訊いている」

「ああ」

くくっと可笑しそうに喉を鳴らす。まったく嫌な野郎だ。

「街には昨日行ったもの」

「……そうか」

僕は後ろを振り向きもせず、鞄を担いで足早に玄関を出た。

その背中に向かって、一言だけガクが付け足した。



「楽しい一日になりそうだわ」

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