インビジブル・ブルー


朝日を浴びる沢を渡り、獣道を北へ斜めにに登る。さらに幾つかの杉林を抜け、尾根を越えること一時間あまり。僕は一度立ち止まり、呼吸を整えた。

森の空気を吸い、大地を踏みしめるたびに、僕の中で渦巻く邪念が、吐き出す息と共に霧散し、浄化されていく。

これでいい。

胸の中で独りごち、僕は再び獣道を歩き出した。

目的地は決まっていた。

画材を抱え、脇目もふらず、僕は黙々と歩いた。

途中、おもむろに昨夜のレイの裸体が脳裏に蘇った。

縛られたまま蝋燭を垂らされ、鞭の痛みに耐えながら、ガクに貫かれていく様を想像した。

それでも僕は歩き続けた。

呼吸が乱れた。

急に足が重くなった。

ぐらりと視界がねじ曲がった。

必死で胸を掻きむしり、悪霊を振り払おうとした。

でも、燻り始めた黒い炎は、もはや消すことはできなかった。

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