インビジブル・ブルー
僕は湖畔に画台を立てた。

そして、森を描き、湖を描き、水鳥を描き、湖に影を描いた。

僕の絵からは、空だけがすっぽりと抜け落ちていた。

「駆け落ちって言うのかしら」

こう言うの。と彼女が言った。とても静かな声だった。

僕は彼女の肩を抱き寄せ、深い口づけを交わした。彼女の冷えた肩が、小刻みに震えていた。

ふいに僕の中で、抑えていた何かが音を立てて崩れていった。

感情が暴走した。

張り裂けそうな痛みに火を放ち、泣きながら彼女を抱いた。

背中に食い込む彼女の爪の痛みだけが、僕にとってのリアルだった。

彼女は体中を薔薇色に染め、僕の腕の中で何度も登りつめた。

深々と貫くたびにのけ反り、息を荒げ、溢れそうになる喘ぎ声を必死に堪えて僕にしがみついた。

「殺して」

と彼女は言った。

僕は彼女の首筋に手を伸ばした。脳髄の奥がジンと痺れていた。

彼女の涙が、僕の指を濡らしていた。

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