インビジブル・ブルー
目を開くと、僕はボロ雑巾のような出で立ちで、湖畔に転がっていた。

さっきまでの景色は跡形もなく消え失せていて、森は黒紺色の空の中でガリガリの骨格を晒していた。

湖で魚が跳ねた。ドブンと泥沼のような音がした。

「……夜」

と僕は呟いた。

そんな当たり前のことすら、今の僕には区別がつかなかった。

「そうよ」

と僕は言ってみた。

一瞬だけ、側に彼女が居るような気になれて笑えた。

がさついた手を伸ばしてみた。

カラカラに乾いたナツメ草以外、何も掴めなかった。

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