インビジブル・ブルー
家の中は本当に静かだった。不整脈気味に時を刻む柱時計の振り子だけが、僕をあざ笑うかのように揺れていた。

「ガク!」

大声で叫んだつもりの声が、滑稽なほど擦れていた。

しばらく待っても返事はない。

仕方ないと諦め、ガクの部屋へと続く階段を上りかけたその時、背後でコトリと物音がした。

振り向いた視線の先で、かすに人の気配を感じた。

細長いため息で呼吸を整えると、僕は階段を降り、リビングの奥にあるアトリエへと向かった。

扉は半開きになっていた。隙間から、レイの細い足首が見えた。



「何をしている」

扉を押し開き、声をかける。

少女は床に俯せになったまま、さして驚く様子もなく、頭だけを持ち上げた。

「絵」

「……絵?」

「そう。絵を描いてるの」

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