インビジブル・ブルー
少女がカンバスに手を伸ばした。それはついさっきまで少女が無心で筆を走らせていた絵だった。

僕はそれを押し除け、空を掴む少女の手首の自由を奪った。

ブラインドから漏れた陽の光が、ちょうどその絵に差し込んだ。

そして僕は見た。

カンバスには、空が広がっていた。

鮮明で、どこまでも突き抜けるような透明色の青だった。

目を疑った。

その青には見覚えがあった。

たった一度だけ、あの時「彼女」が僕に描いて見せた青。

『インビジブル・ブルー』



僕がどれほど苦しみ、独りでもがいても出せなかった色がそこにあった。

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