インビジブル・ブルー
理性、モラル、良心。

人として本来持ち合わせるべき「心の鍵」を、いったいいつ、どこで、僕は落っことしてしまったのだろう。

「はははははッ」

僕は笑っていた。

笑いながら、その一方でそんな僕を冷え切った目で見下ろす、もう一人の自分の存在を感じた。

『狂ってるんだよ』

とソイツは言った。

なんだお前か。と僕は返した。

ソイツは昔から僕の中にいた。ずっと昔からそこにいて、いつも僕を冷ややかに見下ろしていた。

あの時もそうだった。

僕が男達に彼女を奪われ、ボロボロになった彼女を湖畔で抱いたあの時だ。

ソイツはいつだって何もしない。

ただ黙って壊れていく僕を見下ろし、最後に一言こう言うのだ。



『狂ってるんだよ』と。

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