インビジブル・ブルー
少女の顔には、表情というものがまるでなかった。

なにも写さない瞳。ひび割れた唇。長く、ささくれだらけの乱れた髪。

背はさほど高くない。むしろ小柄な部類に入るだろう。ただ、脱がせばそれなりに美しい女のラインを持っていそうではあった。

「名前は?」

「レイ」

「どこから来た?」

「あっち」

無造作に制服のポケットに両手を突っこんだまま、少女は言った。

「消えろ」

と僕は言った。

「ここには何もない。血迷ったガキの来る場所じゃないん……」

言い終わらぬうちに、仰向けに寝転がったままの僕の首筋で、ザンッと何かが地面に突き刺さった。

僕は突き立ったナタを横目に、眉ひとつ動かさず溜息を吐いた。僕のものではない、新鮮な血のりで濡れていた。



「私の処女を奪って」

腕からボタボタと血を滴らせ、うつろな瞳で少女は言った。

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